倫理(8):変化をいかに論理的に記述するか

心理社会的変容を論理的に記述できるかどうかが、心理社会的なアプローチの学問性の有無を決めます。しかも、よくエビデンスと言われますが、エビデンス以上にその論理がいかに倫理的であるかどうかが重要とホロニカル心理学では考えます。

実践的には、エビデンスがあるとされている心理社会的支援を実施することが、必ずしもよい変化をもたらすとは限らないことにも留意が必要です。倫理的に考えたとき、エビデンスは、実際に行われた支援行為の結果に基づき、支援者ばかりではなく、被支援者や被支援者を知る関係者の評価も含むことが大切と考えられるのです。支援者だけの独我論的評価にならないことは重要といえます。

心理社会的支援におけるよき変化は、次のようにしてデーターを集めることができます。
①被支援者自身がよき変化をしたと思っているかどうか。
②①の変化に対して、被支援者が支援者によっていかなる影響を与えられたと思っているかどうか。
③支援者は被支援者のいかなる言動をよき変化と捉えているか。
④被支援者自身がいかなるよき変化を起こしたと思っているか。
⑤被支援者の家族・親族・友人・知人が被支援者の変化をどのように感じているか。

これらの観点から立体的総合的に組み合わせて変化を記述することが、学術的には必要と考えられます。

心理社会的支援の効果測定は、専門家同士だけであらかじめ任意に定めた指標の変化だけを持って専門家だけがエビデンスを語ることは危険と思われるのです。複雑な心理社会的変化は、主観的な実感・自覚を抜きには語れません。この点は、客観的評価基準を定めて変化を一般性をもった論理でもって記述できる物理現象とは異なるといえます。支援者、被支援者、被支援者の周囲の人の変化に対する主観的尺度の一致の有無が、変化に対する信頼度の高い評価尺度になると思われるのです。