不適切な愛着関係

保護者の不適切な養育に対して抱いている子どもの失望、憤怒、絶望に対して、支援者は、子ども自身が接近できるように支援することが大切とホロニカル・アプローチでは考えます。

そのためには、失望、憤怒、絶望を表出しても支援者によってあるがままにシェアされ、そして子ども自身が自分の困難な状況に対処できるようになるまで、安全かつ安心できる適切な容器となることが必要になります。子どもは、どんな激しい情動の表出しても争いで勝ち負けをつけることなく、最終的にはホールドされるという体験を保障されるという体験の累積の中で、愛し愛されるという適切な愛着体験を子ども自身が取り込めるように支援することが大切なのです。

またパワーによる養育しか身につけていない保護者に対しては、パワーによる養育の弊害を注意喚起を促すだけではなく、パワーに代わる適切な保護的容器になるための養育技術や智慧を体験的に獲得して身につくまで、根気よく時間をかけて支援していくことが必要になります。

この時、適切な容器になろうとしても、これまでのパワーによる緊張感溢れる養育の反動として、子どもからの激しい失望感、憤怒、絶望感の排出があるだけに、保護者は、こうした子どもからの逆襲に、傷つきながら耐え忍び生き残るこる覚悟が必要になるだけに、保護者をサポートするということが支援者の役割になります。また子どもに対しても、これまで抱き続けた失望感、憤怒や絶望感を保護者を過剰に挑発することなく、保護者がホールドできる範囲で適切に表出できるように根気よく支援していくことが必要になります。

こうした新しい親子関係が構築されず、パワーによる支配が続くと、やがて支配できない対象を自分の生活世界から排除し合うようになります。パワーによる支配は排除の論理と一体といえるのです。

しかし、パワーによらないほどよい関係は、調律的、共鳴的、鏡映的、対話的であり、生活の場も柔軟性とリラックスしたものとなり、喜怒哀楽を共にする相互包摂的な共生を可能にしていきます。