エナクティヴィズム

認知科学を巡っては、認知あるいは心は、情報記号によって操作する情報処理装置としての脳の働きにほかならないとする「認知主義」が人工知能研究から始まりました。しかし最近ではオートポイエス理論で有名なチリ生まれの神経生物学者であり、オートポイエス理論の提唱者で知られるヴァレラによるエナクティヴィズムによるモデルが盛んに研究されるようになってきています。エナクティヴィズムは、認知科学に現象学を積極的に取り組み、意識を脳による情報処理過程とするのではなく、「認知を生物が環境の中で行う身体的な実践として理解する」(宮原克則,2023)立場です。

認知とは、知的な認識行為だけはなく、環境と身体を持つ生物による知覚と行為が複雑に絡みあったダイナミックな出来事と捉えなおされてきているのです。

ホロニカル心理学の立場とエナクティヴィズムの立場の異同について、今後、研究していきたいと思っています。

 

参考文献
宮原克則(2023).社会性における認識と実践:現象学とエナクティヴィズムの視点から.臨床心理学第23巻第6号.金剛出版.632.