厳密性

心理学に学問としての厳密性を求めるならば、唯一無二の出来事を「あるがまま」に受けとめなければなりません。

それ故、心理学が、「あるがまま」の現象を観察対象として、言葉にしたり、何らかの記号に置き換えた時は、それはもはや本来の「あるがまま」ではなくなってしまうのです。言葉や記号に変換された途端、それは具体的事象に含まれていた複雑なるものから、ある一般的なるものを抽象化して抜き出した結果になってしまうのです。

私たちは、言葉や記号のおかげで、「今・ここ」にとらわれることなく、出来事や万物の複雑な関係性や法則のリアリティを理解することが可能となりますが、しかし、それでは、あのワクワクとして生々しい「あるがまま」のアクチュアリティをすでに喪失してしまっているのです。