ADHD?

心理社会的支援の実践の経験的立場から判断して、環境の変化や社会的文脈に関係なく、個人病理としてのADHDが増えたわけではないようです。

ある場の矛盾や分裂に同調したり、意味なく耐えることに我慢できなくなった子どもや大人が増えてきたといえます。ADHDタイプの人は、デジタル社会の加速度的変動へのむしろ適応型のタイプでもあります。また、環境が安定し、一貫し、安定的なシステムが構築された場所では、投薬などなく、注意欠陥傾向や多動傾向が著しく収まることが多いのも実態です。ADHDと診断されるような人が、落ち着くことのできるような社会環境づくりが必要な時代になってきたと捉えるべきでしょう。

しかしながら、社会のあらゆる場所が、安定性や一貫性や生活リズムが不規則になってきているのも事実です。そこに感覚的に過敏に反応する人間が一層増えていると考えられるのです。ADHDの診断基準は、人と人、人と社会という関係性をめぐる生きづらさのテーマが含まれており、医学モデルだけによる理解の枠を超えていると思われます。社会的関係性が深く関係する障害のテーマを、個人の疾病の観点だけで扱うことなく、もっと統合的観点から抜本的に見直す必要があるのではないでしょうか。