フラクタル構造
微少な部分と全体とが自己相似的な構造をもっていることを「フラクタル構造」と複雑系の科学ではいいます。フラクタル構造の例としては、よく海岸線をモデルにして用いられるコッホ曲線(下左図)が引き合いに出されます。雪の結晶もそうです。
臨床心理学的に見て、ある心的症状や心的問題行動を反復する人には、自己及び世界との関わりをめぐってさまざまな悪循環パターンを反復しています。不適切なフラクタル構造があるといえます。
しかし、そうした時でもホロニカル心理学では、取り扱い可能な小さな悪循環パターンの変容から取り組み、小さな変容を根気よく積み上げれば、水が氷になったり、水蒸気になるように、やがて大きな心的変容に至ると考えています。
メロディの一小節を変えるとメロディ全体の相貌が変わるような現象、将棋の一駒の動きでその全局面が一変するような現象、口もとの微かなゆるみが顔全体の相貌を変えるような現象は、「共変変化」(黒崎宏)と言われています。
ホロニカル心理学におけるフラクタル構造の変容の捉え方も、自己のある部分の変化が自己全体に対しての共変変化をもたらすと考えています。
「ある意味のある小さな変化」が起爆剤となって、やがて共変変化を引き起こし、多層多次元にわたる不適切なフラクタル構造が、これまでとは全く異なる新たな適切なフラクタル構造を自己組織化していくと考えているのです。