もの悲しい


何だかもの悲しい。

「何が」悲しいかとははっきり原因を説明できるというものではないが。気分が沈むというか。

曇り空のもと、秋の山の、雨上がりの紅葉を見たときの気分といったらいいか。この美しさはもうすぐなくなってしまうだろうし、さみしいような、悲しいような、惜しいような、しかし人智ではなんともいたしかたないような、ただ受け入れるしかない。

時は過ぎていく。

もの悲しいといったような、こうした曖昧な言葉が死語になるということは、こうした気分がなくなるということかもしれない。「デジタル」では表現できない気分が消滅していくことなんだろうか。曖昧な、中間色な世界の消滅か。

(定森露子)

 

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