不一致・一致(5):ゆらぎと自己組織化

ホロニカル心理学では、自己と世界の出あい不一致・一致という“ゆらぎ”の現象に注目します。その背景には、自己組織化する自己の場合、自己と世界の不一致・一致の“ゆらぎ”を通して、ある適切な条件させ満たせば、自ずと自己と世界の一致に向かって、適切な自己を自己組織化していくのではないかと想定しているからです。

とはいえ、ホロニカル・アプローチでは、不一致・一致の“ゆらぎ”を無理矢理一致に向けて統合させようとはしません。自己と世界の不一致にも意味があります。自己と世界が不一致となり対立するからこそ、新たな自己と世界が一瞬・一瞬創造されてくるとも考えられるからです。不一致・一致の“ゆらぎ”が、一致に向けて変容するにはタイミングというものがあります。時が熟す必要があります。氷が水に、水が蒸気に変容するタイミングと条件というものがあるのです。

そこでホロニカル・アプローチでは、自己と世界の不一致・一致の行ったり・来たりを、安全かつ安心して自由無礙に俯瞰できる自己言及的自己観察の場を設営することに力を注ぎます。変容を可能とする器づくり・場づくりに力を注ぐわけです。

そうした器や場の中で、被支援者が自己と世界の不一致に対して、自ら一致を求める時にはそれを支援し、不一致の“ゆらぎ”をそのまま俯瞰する時にはそれを支援し、不一致のままにするならばそれを支援します。こうした場を得て、被支援者は、自己と世界の不一致・一致の出あいを、しっかりと観察する主体を強化することが可能となります。

自己と世界が相反しながらも相補的関係を構成しながら弁証法的に各々自己組織化していくという二重性を、被支援者と支援者が積極的に共同研究的協働関係を樹立しながら自由無礙に俯瞰することを重視しているわけです。