研究法(観察主体と観察対象の関係を含む研究)

“こころ”を研究対象とするならば、“こころ”のことをどのようにして研究対象としようとしているかに関する観察主体自体の構え自体が、観察対象に与える影響を考慮する必要があります。誰も“こころ”を“こころ”の外から研究することはできないからです。このことに留意しながら“こころ”の研究を進めていくとき、“こころ”が精神現象として立ち顕れるか、物理現象として立ち顕れるかは、観察主体と観察対象の関係性の差異であることに気づきます。“こころ”の現象に精神現象を見ようとする観察主体には精神現象に見え、物理現象を見ようとする観察主体には物理現象に見えるのです。“こころ”にまつわるさまざまな現象は、観察主体と観察対象の関係論的な関数のようなものといえるのです。

このことは、観察対象として、観察主体から独立的に自存的なある本質を持った実体としての観察対象など実は一切ないことを意味します。

“こころ”の現象は、すべて観察するものや観察されるものを含み複雑な関係性のネットワークによって生成消滅する儚く移りゆく場の出来事といえるのです。