対象恒常性

「目の前から観察の対象となる人や対象が見えなくなっても、今まで見ていたものは、どこかに存在する筈だ」という感覚のことを、「対象恒常性」と心理学では言います。

ホロニカル心理学では、対象恒常性のテーマは生涯にわたる重要テーマではないかと考えています。

自己意識の発達段階が、第一段階にあっては、自己と世界の出あい不一致・一致の断片的直接体験を、同じ自己上の経験として統一する統覚的中心としての「我」の意識は結晶化しておらず、主客や自他の区分も混沌としたまま展開すると思われます。その結果、対象恒常性は、まだ確保されておらず、しばらくは、もっぱら身体的自己と非自己の境界面を中心にして、すべては、断片的な感覚として展開していると考えられます。

しかし、8ケ月~9ヶ月頃の「いないいないばー」を楽しむことができるようになるころには、今、急に視界から消えても、そこには、大切な人はいる筈だという「対象認識」が可能となる頃から、大切な人は自己外の存在と理解しだします。そして、それと同時に、自己意識の統一統覚者としての内的現実主体(名前をもった自己)に目覚めはじめ、第三段階に移行していきます。この頃から自己自身の客観化や自己内省などの認識能力も飛躍的に発達します。

第3段階に移行してからは、言語能力の飛躍的発達とともに、観察主体は、言葉によって対象を重各無尽の世界として識別しはじめるとともに自己自身と自己外の区別をつけるようになり、内的世界と外的世界の境界が確立されていきます。そして大切な人に対する依存対象のイメージが永続的な表象として内在化され、物理的に離れていても、情緒的に安定していられることができるようになります。

そして自己意識の第6段階では、自己は、重要人物の死など度重なる対象の喪失体験を通じて、自己自身が、いずれ永遠の対象恒常性である絶対無となり、新たな絶対有の源になることを受け入れていくことになります。