自己は根本的なパラドックスを抱えています。
自己は、かけがえなき固有の存在となるといった個性化を希求しながらも、他方では、世界との一致を求めて世界を取り込もうとし自己超越的希求をあわせ持ちます。
自己と世界の出あいが不一致になったとき、自己は世界に呑み込まれまいと、自己と世界の境界の明確化をはかろうとするところに個性化への希求が生まれます。逆に、自己と世界が一致し自己と世界が無境界となることを自己は希求します。
個性化への希求と無境界への希求の根本的パラドックスながら、自己と世界は絶え間のない不一致・一致の繰り返しの中で一喜一憂します。