自己言及的自己再帰的自己

自己とは、自己と世界の出あい不一致・一致の繰り返しの中で、いかなる自己が、いかなる自己自身の直接体験について、いかに観察し、その結果をいかに自己言及的実感・自覚するかが、自己自身の自己形成に自己再帰的に影響してくる存在といえます。自己は、自己言及的自己再帰的に自己を自己組織化しているのです。自己は、自発自展的に自己組織化する発達的存在といえるのです。

しかも、直接体験との自己言及的自己再帰的な対話が、自己内に閉じたモノローグ的対話なのか、それとも他者や社会にも開かれた対話なのかどうかは、自己の自己組織化に大きな差異をもたらします。人や社会に信頼を失った人、何らかの理由で抑うつ的になって他者や社会との交流を回避気味になっている人や何かを思い詰めてしまっている人などは、モノローグ的な閉じた内的対話に終始し、ますます他者や社会との健全な接点を失っていってしまいます。

心理社会的支援とは、モノローグ的対話に陥っている被支援者に対して、被支援者にとってはあたかも社会や世界を象徴するかのような立場にいる支援者が、被支援者との精妙かつ微妙な不一致・一致の直接体験の機微を共にすることによって、結果的に被支援者のモノローグ的自己に影響を与え、より開かれた相互包摂的対話に転換していくことを促進する行為といえます。被支援者と支援者の双方が、一瞬の一致という形で自己と世界の直接体験(ホロニカル体験)による感動を共にしながらも、再びすぐに不一致になることを避けられない悲哀を共にしながら、お互いが、共にかけがえなき個的存在として孤独に存在しあっていることを改めて実感・自覚しあっていっているのが適切な支援といえます。ホロニカル体験は、自己と世界とのつながりを無条件に実感・自覚させますが、自己と他者との関係は無境界的になり、自己意識は無となっています。他方、不一致は、自己と他者(世界)との断絶感をもたらしますが、一方で自己の固有性・独自性、自律性を実感・自覚させていくのです。