発達障害の増加や発達性トラウマの増加現象などは、もはや単一の疾患では捉えることは出来ず、自己の発生から死に至るまでの自己意識の発達に伴う問題の多層多次元化に伴う「生きづらさの問題」として包括的に捉え直すことが必要です。
したがって、「生きづらさの問題」に対しては、多層多次元に対する包括的アプローチによる対応が必要となります。
ある特定の問題だけを因果論的にピックアップして強調した専門的治療、教育や心理社会的支援では、ターゲットとなった問題に対してばかりが先鋭化してしまい、包括性や統合性を失う危険性があります。
例えば、ある特定の知覚過敏の治療ばかりに拘泥すればするほど、より知覚過敏症状が強迫性を帯びたりします。また子どもを自閉スペクトラム障害と診断された保護者が、専門家も顔向けできないほどの知識と訓練法を身につけることが、かえって親子関係の自然な絆の形成を阻害したりする場合があります。多剤大量処方が、一時的な不穏状態の抑制に効果があったとしても、日々の生活能力があまりに著しく低下しては効果があったとは言い切れません。各種社会的福祉制度の活用ばかり勧奨していると必要以上に依存的になり、問題解決の主体性を失い、かえって無気力になる場合も出て来ます。
複雑な問題を因果論的に分解して対応するだけではなく、ある層のある次元のある問題への対応が、他の層や次元にいかなる影響を与え、結果的に当事者の生きづらさにいかなる影響を与えているかを包括的統合的視点から常に見なおしていく姿勢が大切になると考えられるのです。