コンパッション

他人の苦悩を目の前にして、なんとかしてあげたいというコンパッション(思いやり、慈悲)を理想として対人援助活動をするとき、理想に向かって現実が展開している間は問題にはなりませんが、理想と現実との差異の壁に遭遇すると、支援者はさまざまなことに苦悩することになります。燃え尽き、共感疲労、代理受傷、理想と現実との間の道徳的葛藤の拡大、理想の価値の切り下げ、過度な依存への不安増大、一向に努力しようしない被支援者に対する軽蔑などです。

ホロニカル心理学でいう支援者の自己意識の発達段階が第5段階を体感している支援者は、傷つきながらも耐え抜くことが可能ですが、第4段階までの支援者は、第5段階の自己意識段階にある先達のサポートがないと、とても支援行為自体が苦悩を伴う作業となります。第4段階にある支援者は、自らの外我が内在化している理想(ホロニカル主体:理)が、内我との対話によって創発されるホロニカル主体(理)を内在化する自律的外我による創発的ホロニカル主体(理)に変容していくことが必要です。他律的な道徳律的慈悲から内的必然性に伴う自律的な道徳律的慈悲に変化していくからです。

しかし、たとえ自己意識の発達段階が第4段階にある支援者でも、被支援と共苦共歓の協働的関係を構築できれば、被支援者と支援者の共創の場に、自ずと被支援と支援者を包むコンパッションによって包まれることがあり、共に第5段階に移行していくことが可能になります。