メタ認知

ホロニカル心理学が重視する自覚の類似概念として、「意識していることを意識するメタ認知」があります。しかし「メタ認知」の研究者は、ホロニカル心理学が観察主体が無となって観察対象と主客合一となる方向に客観的なるものの実感及び自覚を見るする方向とは、逆方向です。「メタ認知」は、「認知を認知する」(中山、四本,2012)というように、主観的な認知を極力排除して客観的なより高次な認知の作用を見ようとします。

「メタ認知」というものを、ホロニカル心理学でいうところの観察主体と観察対象の関係に置き換えて考えるならば、観察主体と観察対象の関係性をさらに上位の観点から観察する主体の方向に、「認知を認知する」働きを見ます。この方向は、ホロニカル心理学的には、観察主体が内在化するホロニカル主体(理)の働きに、主観的な認知を極力排除して客観的なより高次な認知の作用である「理」を見いだす方向といえます。この方向は、究極的には、主観的方向の無限後退の方向、すなわち主観的なる認知を排除した超越論的な理性に客観的なるものを想定することになります。

しかし、客観的なるものとは、ホロニカル心理学的には、主観を排除する観察主体の理の方向にはなく、むしろ観察主体が無となって観察対象と一になる主客合一の直接体験の方向にあると考えます。あるがままの方向が客観的なるものと考えられるのです。客観的なるものをメタ認知の方向に探しては、実在する客観的なる対象からますます遠く離れた理だけを客観的なるものとする方向に向かってしまうのではないかと考えるのです。

観察対象から切り離された超越論的観察主体の理に、客観的なる理があるとする考え方は、人間に観察対象を支配コントロールできるという幻想をもたらすだけではないでしょうか。

参考文献:中山 遼平、四本 裕子、東京大学 総合文化研究科、2012。