ホロニカル心理学の統合性

ホロニカル心理学では、既存の心理療法や主だった宗教学派を含むあらゆる心理社会的支援の理論や技法は、観察主体と観察対象の組み合わせの差異として統一的かつ統合的に理解することが可能と考えています。また、そのほとんどの理論や技法が、自己と世界が一致する瞬間の体験を重視していると考えられます。

ただし、自己と世界が無境界となって、すべてが全一になる一瞬に対する表現については、歴史的・文化的な言語の違いによる差異があります。しかし、いかなる文化であろうと、もともと言語化不可能な自己と世界の一致の体験を観察対象として言語化した途端、自己と世界の関係は不一致となって切断されてしまうことは共通しています。

自己と世界の出あいの直接体験を観察対象にするとき、観察主体と観察対象の組み合わせは様々に考えられます。が、しかし、本来、言葉でもって表現することが困難な自己と世界の区分なき全一で無自性の世界は、観察主体と観察対象の組み合わせの分だけ、重々無尽の多層多次元な世界にたちまちのうちに変化することは避けられません。

こうした現象からホロニカル心理学では、自己と世界の関係は、不一致と一致が相矛盾しながら同一にあることによってすべてが一即多・多即一にあると考えています。

自己と世界の回避することのできない矛盾に対して、あらゆる心理社会的支援は、自己と世界の一致時と不一致時の体験の差異を手がかりにしながら、不一致が、少しでも一致する方向に向かって、適切な自己や世界の適切な変容を促進しようとしているといえます。

ホロニカル心理学では、あらゆる心理社会的支援に関する理論と技法の差異は、一切合切の矛盾と統合の作用を包摂した自己と世界の不一致・一致の瞬間の捉え方の差異として統一的かつ統合的に理解可能と考えているのです。