自己とは(11):破壊と創造の狭間

破壊と創造の狭間において、創造不断の生命が育まれています。秩序化と無秩序化の狭間に自己組織化する生命が考えられます。

秩序と無秩序の狭間を複雑性の科学ではカオスの縁と呼びます。

自己は、カオスの縁において無から有として創造され、いずれ無となる生成消滅する非実体的な現象と考えられます。

自己は、カオスの縁においてさまざまな要素の相互作用のうちに部分の変容が全体の変容を引き起こし、全体の変容が部分の変容を引き起こすといった円環的なホロニカル関係を形成しながら、古い自己が破壊されるところに自ら新しい自己を自己再帰的に創造しているのです。

自己とは、個としても超個としても死と再生のテーマを抱えつつ、自己が自己自身の個体を超えた自己形成しようとする自己言及的な歴史的存在だといえます。

 

※井筒俊彦(1986).創造不断;東洋的時間意識の元型.In:「井筒俊彦全集第9巻,2015.慶應義塾大学,pp106-185.