臨床心理学における論理とは:因果論的なパラダイムの限界とホロニカル論の重要性

金沢21世紀美術館の敷地内にある茶室の写真
金沢21世紀美術館の敷地内にて

“こころ”を扱う心理学のうち、特に臨床心理学の論理は、因果論的なパラダイムだけでは学問的な論理的展開がうまくいきません。“こころ”の現象は、物理学的な現象よりも複雑であり、因果論的論理では十分に対応できないといえます。

例えば、一見、因果論的に説明できそうな要因も、他のさまざまな要因と多層多次元に絡み合っています。子どもの問題行動の原因が親の不適切な養育態度にあると仮定しても、親が不適切な養育を行った要因は他にもいくつか考えられます。親を支援する立場にある身近な関係者の親への不適切な対応も事態を悪化させる要因となり得ます。また、親自身が抱えている育て憎さという要因も子どもの問題行動に関与しているかもしれません。このように、親の養育態度を単一の原因として取り上げたとしても、他の多くの要因が親以外の領域で絡み合っているのです。

そのため、こうした現象を理解するための臨床心理学は、原因と結果を因果論的に説明するだけではなく、異なる論理を明確にする必要があります。ホロニカル心理学ホロニカル論は、因果論の限界から創発された論理のひとつです。