「感じるところ」が原点の心理学

心理学は、「感じるところ」から始まらなければならなりません。
「感じるところ」に心理学の学問的知識の自己照合を求め、学問的知識が腑に落ちなければなりません。

「感じるところ」を考えだした瞬間、厳密には、心理学は、“こころ”の現象を対象とする他の学問領域(哲学、物理科学など)に関与することになります。

感じるところ」に“こころ”の働きを発見することが、心理学の本質です。

“こころ”の働きは、まず大きく2つに分けられ、注意深く感じ取ることができます。それは「多様化」と「統合化」という相反する働きです。この相反する働きをもつものこそが“こころ”なのです。

感じている時の“こころ”は、本来、ひとつです。しかし、何か“こころ”に揺れが生じると、瞬時に“こころ”の現象が観察主体と観察対象として分離し始めます。

この時、観察主体が“こころ”の現象をますます識別しようとすると、“こころ”は多様化します。しかし、同時に、多様化した“こころ”を再度統合しようとする“こころ”の働きも現れます。」

現在の出来事を、ただ感じとっているときの”こころ”はひとつです。しかし、私が「感じるところが心理学の原点である」という文章を書いているとき、感じている“こころ”と、それを表現しようとする“こころ”が分かれて存在します。

鎌倉時代の臨済宗の僧、大燈國師の言葉には、「億劫相別而須臾不離 盡日相対而刹那不対(おくごうあいわかれてしゅゆもはなれず、じんじつあいたいしてせつなもついせず)」というものがあります。永遠に別れていても一瞬も離れない関係、常に向き合っていても一瞬も向き合っていない関係を指しています。ホロニカル心理学では、本来、ひとつの“こころ”が多様化と統合化を相反しながら同時に持つ関係が、大燈國師の言葉の意味するところと一致していると考えています。