現代心理学の普遍性への疑問

現代心理学、特に臨床心理学のほとんどは、西洋的なパラダイムが普遍的であるかのような前提に立脚しているところがあるのを否定できません。

しかも西洋的パラダイムは、何世紀にもわたって培われてきた宗教、哲学や科学的思考の習慣の上に構築されています。

しかし、西洋とは異なる文化を持つ民族は多く、しかも多様です。グローバル化は、西洋的なパラダイムに基づく科学や経済を世界中に浸透させましたが、明らかに心理社会的な価値観の多様性まで西洋的パラダイムだけの限界も露呈させてきました。むしろ西洋的文化の普遍性や絶対性への信頼が失われ、相対化されており、世界中で多様化・多元化が進行しています。

西洋的な個人主義の利己的側面の影の問題の顕在化は、個人と個人の無縁化社会を到来させています。また西洋型の人間と自然の対立的思考は、環境破壊の世界規模の危機を招いています。西洋型の技術革新は、科学兵器の大量所有、経済大国による世界の支配による南北問題や先進国における経済格差を拡大させてきてしまったといえます。

これらの現実は、すべて私たちの“こころ”に影を落とし、未来への不安をもたらしています。

こうした歴史的社会的な外的世界の問題を無視して、内的世界の変容だけを追求することは不可能です。むしろ、価値の多様化や多元化や文化の差異が私たちの深層にいかなる影響を与えているかを明確化しつつ、むしろ異文化的なるものを排除するのではなく、異質なるものとの出あいによる自己違和感やノイズを排除することなく、お互いがほんの少しでも生きやすい人生の道を共創的に発見・創造していくことが大切とホロニカル心理学では考えています。

より生きやすくなる道は、すでにどこかに正しい道として存在するのではなく、外的世界と内的世界のせめぎ合いの苦悩の中から生まれるものだと考えられます。