
ホロニカル心理学において「適切な自己の自己組織化」と言うとき、自己組織化に伴う変容は、自己の内部に閉じた領域で完結するものではありません。むしろそれは、自己と世界が相互に開かれ、互いに働きかけ合う動的な関係の場において生起すると考えています。自己と世界がせめぎあう場を、ホロニカル心理学では、「直接体験」と概念化しています。
“こころ”は、個人という自己の内面には閉じてはおらず、つねに世界へと開かれています。自己の“こころ”の深奥は、個人の内部のみに限定されるものではなく、無限に広がる世界との関係に向かって開かれています。したがって、自己の変容は、自己の内奥から一方的に生じるものではなく、自己が世界と出あい、世界から影響を受け、同時に世界もまた自己からの働きの影響を受けるという相互生成的な場において展開していると理解されます。つまり、自己は世界との出あいの体験を自己の経験として自己組織化しようとし、世界もまた自己との出あいの中で、新たな世界を組織化しようとしていると考えられるのです。
このように、自己と世界は互いに取り込み合い、せめぎ合いながら、それぞれを自己組織化していきます。そのせめぎ合いは、安定した自己や世界秩序の内部ではなく、既存の秩序が揺らぎ、新たな秩序が生まれようとする「カオスの縁」において、もっとも活発に生起します。ホロニカル心理学における変容の源泉は、まさにこの自己と世界の相互生成的な領域にあると考えられます。
この領域では、意識と無意識、言語化された認識と言語化以前の直接体験が交錯します。自己と世界の出あいは、まず非言語的な直接体験として生起します。その直接体験において、自己と世界は不一致・一致を繰り返しながら、絶えず新たな意味と関係を生成していると考えられるのです。
ここで自己の自己組織化で重要になるのが、内我と外我の働きです。内我は、自己と世界の出あいにおいて生じる非言語的な直接体験を、全体的・身体的・直覚的に実感する働きです。これに対して外我は、その直接体験を言語化し、意識化し、概念的に整理する働きです。
また適切な自己の自己組織化において重要なのは、外我による言語的理解が、直接体験を一方的に支配することではありません。むしろ、内我が直覚する直接体験の変容を、外我が丁寧に受け取り、言語化し、意識化していくことです。
この意味で、意識が直接体験を一方的に変容させるのではなく、直接体験の動的変容が意識のあり方を変えているということに注目することが大切になります。ただし、意識もまた、いったん形成されると、その後の直接体験の受け取り方に影響を及ぼします。したがって、直接体験と意識との関係も、一方向的関係ではなく、相互循環的な関係にあります。そのなかでも、変容の起点は、言語化以前の直接体験の揺らぎと再編成にあると考えられます。
自己と世界のせめぎ合いによって、直接体験は多様化し、複雑化します。その多様化した直接体験を、内我が統合的に実感し、外我がそれを適切に意識化・言語化していくとき、自己は閉じた自己理解を超えて、世界との関係のなかで新たな自己を組織化していきます。
内我が感じているところを外我が考えることが大切になるといえるのです。