現実世界とは

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現実世界とは、単に観察対象として知的に把握され、概念的に再構成された世界を意味するのではありません。むしろそれは、自己がその内に身を置き、つねに触れながら生きている世界を指しています。観察対象として再構成された世界は、観察主体による抽象化や概念化を経て成立したものであり、自己が直接体験として関与している歴史的・社会的世界そのものとはいえません。したがって、主観を切り離した「客観的世界」のみを現実世界とみなす立場には限界があり、心理学はまず、自己が現に触れつつ生きている世界を、現実世界の根源的契機として含み込んで捉える必要があります。

このように見たとき、観察者が触れている世界とは、観察主体としての自己が対象化的な構えをいったん離れ、“無”として世界そのものに触れている瞬間であると考えることができます。そこでは、観察主体と観察対象との分離は一時的に後景化し、両者が一つの出来事として顕れ、その全体が実感として自覚されます。すなわちそれは、自己と世界とが未分化なままに混同される状態ではなく、両者の関係そのものが直接的な現実として立ち顕れている局面であるといえます。

他方で、人間は常にそのような合一的局面のみに生きているわけではありません。自己はまた、観察主体として自己や世界を切り分け、それらを対象として把握し、意味づけ、理解する働きも有しています。この対象化の契機は、学問的認識や日常的判断を成立させるうえで不可欠ですが、それのみでは、自己が世界に触れつつ生きている直接的現実の全体性を十分に捉えることはできません。

ホロニカル心理学において重要なのは、観察主体と観察対象とが合一する瞬間と、両者が切断されて自己や世界が対象として把握される瞬間との、いずれか一方に心理学の基礎を置くことではありません。むしろ、この両契機のあいだを生成的に往還しつつ成り立つ人間の現実経験そのものを、心理学の基盤として捉えることにあります。したがって心理学は、対象化された世界の分析にとどまるのでも、合一的体験の記述のみに閉じるのでもなく、自己と世界との関係が合一と切断の両局面を通して多層・多次元に立ち顕れる過程そのものを理論化する方向へと再構築される必要があるのです。