心理社会的支援の現場では、生きづらさの原因を一つに決めて、「この方法なら誰がやっても同じように解決する」と考えるのは、実際にはなかなか難しいものです。人の生きづらさには、さまざまな出来事や関係、気持ち、環境などがいくつも重なって関わっています。しかも、何を原因と見るかは、人によって違うことも少なくありません。ですから、対応策も一つではなく、いくつもあり得ます。
このような現実の中で大切なのは、ある働きかけが、その人や家族、周囲の関係、生活全体にどのような変化をもたらしているかを、広く見ていくことです。問題が複雑に絡み合っているときほど、全体がどのように動いているのか、そして少しでも生きづらさが和らぐ方向に進んでいるのかを、落ち着いて見つめることが大切になります。つまり、一つの支援がどこにどのような影響を与えたのかを、続けて確かめながら考えていく必要があるのです。
また、同じ状況を見ても、ある人は「ここに問題がある」と感じ、別の人は「こちらのほうが大事だ」と考えることがあります。このとき大切なのは、どちらが正しいかを争うことではありません。そうではなく、それぞれの見方がどのような違いを持ち、どのような関係にあるのかを、一段高いところから見ていくことです。言い換えれば、「誰が見ているのか」「何を問題として見ているのか」という組み合わせそのものを、固定せず柔軟に考えることが必要なのです。
見る人と見られるものとの関係を決めつけてしまうと、問題全体の動きが見えにくくなります。反対に、その組み合わせを柔らかく入れ替えながら考えていくと、複雑に絡み合った問題の全体像が少しずつ見えてきます。
ホロニカル心理学が大切にしているのは、まさにこのような「全体が変化していく動き」を見ていくことです。一つの原因や一つの正解を求めるのではなく、多層多次元な要因が互いに影響し合いながら変わっていく過程そのものを、丁寧に自由無礙に俯瞰し続けること。そして、その中で本人の生きづらさがどの方向に動いているのか、どこにどのような変化が起きているのかを、ていねいに追っていくことが、支援においてとても重要になると考えています。