
支援者と被支援者の関係には、役割や責任、権限などの面で、一定の非対称性があります。しかし、その非対称性は、どちらか一方だけが他方を変えるという関係を意味するものではありません。両者がともに変化し続けるとき、支援関係は、役割上の非対称性を保ちながらも、人と人とが影響を与え合う相互的な関係へと変容していきます。
ホロニカル・アプローチが重視する「問題の外在化」は、こうした関係性の変容を促すための有効な技法です。
外在化とは、被支援者が抱える問題を「本人の内側にある欠陥」として捉えるのではなく、その人の自己(場所的自己)が、生きている場に生じた多層多次元にわたる矛盾を、たまたま背負うかたちで顕れた現象として捉え直すことです。
問題を本人からいったん切り離して外在化することで、支援者は、被支援者を「問題を抱えた人」として一方的に評価する立場から離れることができます。そして、外在化された問題を両者の「あいだ」に置き、同じ方向から眺めながら、共同研究的に向き合う関係をつくることができます。
この共同研究的な関係では、支援者が一方的に被支援者を支援するだけではありません。被支援者の語りや体験が、支援者に新たな視点や気づきをもたらし、支援者自身の考え方や在り方を変えていく契機にもなります。
つまり、外在化された問題を媒介として、両者は相互包摂的な関係のなかで、ともに変容していくことができます。そこに「お互い様」という感覚が育つとき、支援関係にある非対称性は少しずつゆるみ、人と人とが支え合う相互的な関係が立ち顕れてきます。
一方、被支援者であれ支援者であれ、「自分の考えだけが正しい」と確信した瞬間から、両者のあいだには対立構造が生まれます。そこでは、どちらが正しいか、どちらが勝つかという論争だけが残り、ともに新たなものを生み出す場は閉ざされてしまいます。
しかし、それぞれが自分の考えや信念を語りながらも、他者との違いに開かれ、その違いから新たな視点を取り入れることができれば、対話は続いていきます。異なる文化や世界が出会うような対話のなかで、互いの不一致を消すことなく関係し続ける・・・・・・そのような「不一致の一致」が働く場が保たれるならば、そこから新しい考え方や生き方が生まれてきます。
外在化された問題は、この「不一致の一致」を可能にする媒介として働きます。
その意味で、支援者が被支援者によって助けられ、変えられる契機を、いかに大切にできるかは、心理社会的支援における本質的な課題です。支援者と被支援者が、それぞれの役割や責任の違いを保ちながら、ともに心理社会的に支え合う関係を、どのように場のなかにつくり出していくのか。問題の外在化は、そのような場をひらくための重要な方法であり、ホロニカル・アプローチの中心的な実践の一つです。
支援する人と支援される人が、ともにかけがえのない存在として出会い、互いの変容を促し合っていく。そのような場をつくることこそ、分断と対立が深まる現代社会に求められているのではないでしょうか。