自己の主体性とは

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ホロニカル心理学において主体とは、外的世界に対しては行為として自己を表出させると同時に、内的世界においては実感および自覚を成立させる基盤的契機であると考えられます。すなわち主体とは、外界への働きかけと内界における体験成立とを媒介する根源的な働きであり、人間存在の成立条件そのものに関わる契機であるといえます。このような主体性は、単に内面に閉じた意識作用として理解されるべきではなく、自己と世界との関係において現実化される動的な働きとして捉えられなければなりません。

このような観点からホロニカル心理学では、自己を、内と外との境界を有しつつ、自己と世界との間を往還しながら成立する主体的存在として位置づけます。ここでいう自己は、あらかじめ固定的・実体的に存在するものではなく、自己と世界との関係のにおいて、その都度、生成し、変容し、再編成されていく存在です。したがって自己とは、単独で完結した実体ではなく、自己と世界との相互作用のなかで成立する関係的存在であると定義することができます。

さらに、自己とは、自己と世界とが相互に関係し合い、ときに不一致となり、ときに一致となりながらせめぎ合う場において、自己自身および世界を実感・自覚しつつ、みずからを不断に自己組織化していく主体的存在であると考えられます。ここでいう自己組織化とは、単に自己内部の統合過程ではありません。むしろそれは、自己と世界との関係において生起する緊張、葛藤、調和、ずれといった多様な現象を契機としながら、自己のあり方そのものが絶えず生成し直される過程を意味しています。したがって、自己の形成とは、一方向的な因果連鎖によって説明されるものではなく、関係の場における相互規定的かつ生成的な編成過程として理解される必要があります。

この点において、ホロニカル心理学における自己理解は、近代的な主客二元論に基づく自己観とは異なる立場をとります。近代的自己観においては、自己はしばしば内面に閉じた意識の中心として捉えられ、世界はそれに対置される客観的対象として理解されてきました。しかしホロニカル心理学では、自己と世界とは当初から切り離された二項として存在するのではなく、相互に規定し合いながら一つの関係的現実を形成しているものと考えます。その意味で自己とは、世界から独立した観察者ではなく、世界との関係のうちにおいて自己自身を経験し、また世界を経験していく存在です。この理解は、主客分離以前の直接体験の次元を重視する現象学的視点や、存在を関係において捉える立場とも深く通じ合うものです。

また、自己の重要な特質として、自己超越性を挙げることができます。自己は、自己自身の内的状態のみを閉鎖的に意識する存在ではなく、自己を成り立たせている世界との関係そのものをも実感・自覚しうる存在です。ここでいう自己超越性とは、自己が単に自己を越えて外部へ向かうという抽象的観念を意味するのではありません。そうではなく、自己が自己と世界との関係を経験し、その関係のなかで自己自身を相対化し、捉え返し、再組織化していく構造的可能性を指しています。すなわち自己超越性とは、自己が自己内部に閉じることなく、関係の場そのものへと開かれ、その場において自己自身を更新しうるという自己の根本的性質であることを意味します。

さらにホロニカル心理学の立場では、このような自己は、単に個別的存在として孤立しているのではなく、部分でありながら全体を含み、全体のうちにありながら固有の個別性を保持するという、ホロニカルな構造を有していると考えられます。すなわち自己は、一回的でかけがえのない個別的存在として生きると同時に、自己を成り立たせているより大きな関係世界を内包しつつ、その世界との相互作用のなかで自己を形成していく存在です。この点に、ホロニカル心理学の自己論の独自性があります。自己は単なる個体ではなく、部分と全体との相互包摂的関係のうちに成立する存在であり、その構造ゆえに、自己理解は常に世界理解を伴い、世界理解はまた自己理解へと折り返してくるのです。

このように考えるならば、自己とは、内面に閉じた固定的実体でも、外的環境に一方的に規定される受動的存在でもありません。むしろ自己とは、自己と世界とのあいだに成立する関係の場において、実感・自覚を媒介しながら、不断に自己組織化し、自己超越し続ける生成的な主体であると結論づけることができます。そしてこの理解は、心理学を、内面の実体を記述する学としてではなく、自己と世界との関係の場において生起する“こころ”の現象を明らかにする学として再構築するための理論的基盤となります。