
ホロニカル心理学では、内我と外我が相互に対話しながら発達していくことを重視します。
その際に大切なのは、まず内我が世界との出あいの中で試行錯誤し、その体験を後から外我が振り返り、意味づけていくということです。
私たちはしばしば、外我が十分に理解してから行動しようと考えがちです。しかし実際には、外我が理解したことを内我に実行させるよりも、まず内我が先行してさまざまな体験を重ね、その結果を外我が整理し理解していく方が、新たな学びや変容につながりやすいのです。
これは自転車に乗ることによく似ています。自転車の乗り方をいくら頭で理解しても、それだけで乗れるようにはなりません。何度も転び、バランスを崩しながら試行錯誤する中で、自分と自転車との関係が感覚運動的に統合されていきます。そして、その体験を振り返ることで、「なぜ乗れるようになったのか」を外我が理解していくのです。
たとえ教科書で自転車の原理を学んだとしても、それだけでは内我による身体的・体験的な学習にはなりません。
同じことは、野球や自動車の運転、料理などにも当てはまります。どれほど理論を理解していても、実際に体験しなければ身につきません。また、体験を伴わない知識は、生きた実感や感動を生み出しにくいものです。
ホロニカル心理学の立場から見ると、学びとは単に知識を蓄積することではありません。自己と世界との出あいの中で、内我が直接体験を重ね、その体験を外我が俯瞰しながら統合していく過程なのです。
そのため、何事も「理論を完全に理解してから実践する」のではなく、「実践しながら理論を学び、理論によって実践を振り返る」という循環が重要になります。理論は実践によって検証され、実践は理論によって深められます。
新しいことに挑戦するとき、「十分に理解してから始めよう」と考えていると、いつまでも最初の一歩を踏み出せないことがあります。むしろ、まずは内我が世界と出あい、試行錯誤しながら体験してみること。そして、その経験を外我が振り返り、意味づけること。その往還こそが、自己と世界との関係を豊かにし、新たな可能性を創造していく原動力になると思われるのです。