ホロニカル体験(7):自己と世界の一致の瞬間

ホロニカル心理学でいうでいう自己と世界の一致ホロニカル体験は、瞬間・瞬間の出来事です。世界最速の光速かそれ以上の「瞬く間」であり、「刹那」です。瞬間・瞬間の非連続な連続が、持続的なホロニカル体験の実感をもたらすことはありますが、基本は瞬間です。

ホロニカル心理学では、自己と世界の出あい不一致・一致は、相矛盾・対立しながら同一にあると考えています。自己と世界の存在を実感・自覚した時とは、自己と世界が不一致となった瞬間であり、自己と世界の存在を意識していない時とは、「意識と存在の0ポイント」(井筒俊彦,1993)となった瞬間であり、しかも不一致と一致が同一にあると考えているのです。

したがって厳密に言えば、「0」の状態にあっては、意識する主体も不在ですからホロニカル体験があったとしても、自己と世界の一致を意識する主体は不在となっています。したがってホロニカル体験という豊穣なときめきがあったというのは、事後的気づきといえます。

私たちは、無・意識の時に自己と世界が一致する瞬間と、意識した瞬間に自己と世界が相矛盾し対立するような出来事が同一にあるような絶対矛盾的自己同一(西田幾多郎,1939)の「時間即空間」「空間即時間」の時空に生きています。

しかし、私たちは、日頃、本来、不即不離の関係にある時間と空間を分けて、「過去」「現在」「未来」という時間意識に“こころ”が奪われてしまいます。それは、すべてを言語でもって識別し区分化した空間的世界に生きる習慣が頑固に身についていることによります。言葉を使わずに、不一致と一致の瞬間が同一にあることをあるがままに体感することが難しくなってしまっているのです。それでも一度でも、「時間即空間」「空間即時間」の時空に生きていることが了解されてくると、新しい自己と世界の関係が創発されてきます。言葉でもって出来事を認識・識別したり判断することを止めて、ただあるがままにすべての出来事を、出来事そのものとなって見ていると、不一致と一致が同一にある「永遠の今」の世界に目覚めることが可能になってくるのです。

参考文献
井筒俊彦(1991),意識と本質;精神的東洋を索めて.岩波文庫;81-82.
西田幾多郎(1939),絶対矛盾的自己同一.(上田閑照編(1989),自覚について他四 篇:西田幾多郎哲学論集III.岩波文庫;7-84.