共感とは自己融合的になることではない

ホロニカル心理学的には、「共感」は、自己に対して、「他者がいる」ことで成り立つ出来事であり、自他融合的になることではありません。

乳幼児時期早期では、自他境界が融合的で、「他者」という意識が成立していませんから、共感関係が成立しません。共感とは、自己意識の発達が、自他融合的関係から分離固体化、「私(我)」という意識が成立してからの出来事といえます。

また「共感」を、自己と他者(他者)が一致するホロニカル体験と区別することが大切です。自己と他者の一致の体験は、自己が我の意識を失って自他融合的な段階に退行することを意味し、そうした自己と他者(世界)の一致の体験(ホロニカル体験)は、共感とは異なると考えます。

ホロニカル心理学のABCモデルでいえば、共感とは、自己と世界の関係が不一致の自己違和体験(A点)や、一致のホロニカル体験(B点)を、C点の立場から共同的に共鳴鏡映的に共有できた時の体験を指します。A点とB点の行ったり・来たりを、C点から共にする存在との間で共感的関係が成立すると考えるのです。