主体と場所

原始時代の人類は、自己が生きている所に包まれ、場所の霊性に圧倒されながら生きていました。が、その後、人類は、主体的意識(我:現実主体)に目覚めることによって、場所を自己の主観から切り離し、主体の場所的霊性からの自立を獲得しました。

主体は、場所を分析と操作によって再編成可能な世界に変容させていきました。場所を対象化し、支配・コントロールすることを覚えていったわけです。科学文明の繁栄は、その歩みの典型例です。

その結果、先進国の人々に至っては、もはや場所の存在や霊性的側面を全く忘れてしまっているかのようです。

しかし場所的感覚の喪失による弊害は大きく、世界規模の食料危機、地球生態系や自然環境の破壊、格差社会の増大などの地球規模の危機や、地域共同体的社会の解体、人と人の間の共有感覚の喪失化や無縁化を促進してきました。

ホロニカル心理学では、自己が生きて死にゆく場としての場所から自己のあり方をもう一度見直そうとします。自己を、場所的自己の立場から再構成しようとします。

場所なき自己は、頭で考えだされた自己であって、生きた自己ではないと考えられるからです。