みんなの中で、ひとりでいられる力

価値の多様化、多元化社会の影の問題は、常識や信念の対立や不一致による共感不全が拡大する傾向を否定できないことにあります。多様化・多元化が浸透し、人がますます個性化する社会にあっては、価値観や信念の異なる者同士が、いかに共生していくかがより鮮明な問題になってきたわけです。

そんな社会だからでしょうか。次のような生き方をする新しいタイプの人が登場してきています。「みんなの中にいながらも、ひとりでいられる力をもった人」の登場です。他者や社会に対して、受動的でも、能動的でもなく、お互いの異文化性・異質性に対して寛容な態度を維持し、異文化性・異質性にほどよい刺激を受けつつも、常に、かけがえなき自分自身でもいられる力をもった人です。

しかも、そうした人たちの感覚は、自己と他者の関係の多様性・多元性ばかりでなく、内なる自己自身の多様性・多元性への実感・自覚しており、かつ、自他関係の差異も、同じ何かの多様かつ多元な顕れということに実感・自覚しつつある人です。