絶対矛盾的自己同一(1):西田哲学の重要概念

二重スリット実験の物質波解釈

量子力学などの描く世界観からすると、「瞬間にすべてが畳み込まれている」となります。

空間と時間をわけて考えている私たちの思考からは、なかなか理解の難しい世界観です。

しかしこうした世界観も、西田哲学でいうところの「時間即空間」「空間即時間」という絶対矛盾的自己同一というパラダイムや、般若心経でいう「色即是空」「空即是色」を理解できるようになると理解し易くなると考えています。

私たちは、今のある場面、昨日のある場面や、その前のある場面などを記憶していますが、実際には、記憶にある過去は、今・この瞬間にはどこにもなく、今・この一瞬に過去が含まれ、かつ未来が開かれてくる無常の一瞬・一瞬があるだけと考えられるのです。そうした実在する世界を時間と空間に分けて、私たちは現象世界として私たちに再構成して認識しているわけです。一瞬の有を否定する無と、一瞬の無を否定する有が絶対的に相矛盾しながら同時にあると考えられるのです。一瞬・一瞬の間は「無(空)」と考えられるのです。生成消滅の絶え間ない繰り返しの世界が実在する世界と考えられるのです。

時間と空間という対立軸の中で生成消滅しているようにみえる現象世界も、真に実在するレベルでは、その都度その都度のある時空という場において一瞬・一瞬の出来事が、ひたすら非連続的に連続しているというわけです。

一瞬・一瞬の出来事を全一的に存在する出来事として認識しようとする時に「空間的理解」となり、連続的な出来事として認識しようとする時に「時間的理解」になると考えられます。

量子力学の世界では、「量子トンネル効果」「量子コーヒーレンス」「量子のもつれ」など、粒子が通り抜け不可能な障害物に当たって一方から消えても反対側に現れたり、量子的なものが同時に複数の振る舞いをしたり、同時に複数の経路を通って移動することができるという誠に不可思議な振る舞いがあると言われています。しかし、こうした現象も空間的な認識や時間的認識を分けず、本来不可分な時間即空間・空間即時間という絶対矛盾的自己同一(西田幾多郎)のパラダイムから理解すれば了解可能となってきます。すべてはゼロポイントからの出来事といえるのです。

ホロニカル心理学では、すべては空というゼロポイントから生成消滅を繰り返している場の出来事と考えます。そして生成消滅を繰り返す自己と世界の出あいのにおける一瞬・一瞬の非連続的連続の出来事が自己にとっては直接体験です。その直接体験を、内我が空間的に全一的に直覚し、外我が時間的に連続するものとしてホロニカル主体(理)の基準によって識別・認識し、多層多次元にわたる重々無尽の世界を再構成していると考えています。