差異の明確化

心理社会的支援のさなか、被支援者が思わず身を乗り出したとします。その瞬間、身を乗り出す前と後の身体感覚や姿勢の変化に附随する気分や気持ちの差異を被支援者に求めます。こうした差異の明確化作業を通じて、被支援者は無意識で無自覚だった身体感覚の変容の意識化を促進することができます。差異の明確化と意識化の作業は、被支援者自身が自己と世界がより一致する方向を感じたとき、身体的自己にどのような繊細な変容が起きるかについての実感・自覚に、やがてつながっていきます。支援中の微妙な変化に、被支援者の刻々変化する自己と世界の不一致・一致直接体験や観察主体と観察対象の関係の変容プロセスのすべてが包摂され反映されているのです。それ故に、差異の明確化によってその変容プロセスを被支援者が実感・自覚することが可能になるのです。

差異の明確化の対象は、姿勢の変容以外にも、認知の変容であろうが、家族関係の変容であろうが、夢の変容であろうが、どんなものでも可能です。大切なことは、観察主体が観察対象との関係においてその微妙な差異を意識化することが、よりよい方向に向かっていく手がかりになるということに被支援者自らが目覚めることができるように援助することです。

こうした考え方には、生命としての自己は、自己と世界の不一致一致の繰り返しの中で、自ずと一致に向かって、自発自展的に自己を自己組織化すると言う考え方が根底にあります。