今・この瞬間(1):一瞬を生きる

自己と世界がおいてある場所において、自己と世界は出会い、共に時々刻々変容しています。過去の自己と世界を、包摂しながら、過去の自己と世界を否定し、新たな未来を創造し続けられているのが、生き生きとして実在している「今・この瞬間」です。過ぎ去った過去や、未だ来ない未来を思い浮かべているのも、厳密には、「今・この瞬間」といえます。

「今・この瞬間」とは、哲学者の西田幾多郎が論考したように「すべての時を包み、現在が現在を限定する意味にて、すべての時を限定する絶対的現在ともいふべきものは、周辺なくして到る所に中心を有つ絶対無の自覚的限定といふことができる。かゝる意味に於て絶対的現在と考えられるものは何処にても始まり、瞬間毎に新たに、いつでも無限の過去、無限の未来を現在の一点に引き寄せることのできる永遠の今といふことができ、時は永遠の今の自己限定として成立すると考えることができる。真に永遠の今といふべきものはプラトンの考へた如き永遠不変の意味ではなくして、その各の点『それぞれの時点、瞬時』に於て無限の過去無限の未来を消すことのでき、それに於て何処でも何時でも時が始まると考へることのできる絶対無の自覚といふ如きものでなければならない。」といえます。

現在が現在をさらに限定に、そうした限定が非連続的に連続しながら変容することによって、過去を含み未来が開かれてくるのが、「今・この瞬間」といえるのです。

こうしたかけがえなき、「今・この瞬間」を実感・自覚しながら生きることの大切を私たちは忘れてはならないといえます。

参考文献:「西田幾多郎全集」.岩波書店.第6巻,188.