ABCモデル(4):適切な観察主体となるC点の重視

ABCモデルの基本形

ホロニカル・アプローチの基本モデルであるABCモデルを、A点からB点への移行を重視した理論と誤解してはなりません。

A点からB点への移行を希求する当事者は、たとえ一時の自己と世界の一致によるホロニカル体験に忘我脱魂の至福を体感したとしても、B点における有頂天気分から醒めた途端、苦悩(A点)に墜落してしまいます。

また当事者の自己と世界の不一致に伴い苦悩(A点)からホロニカル体験(B点)への移行を図ろうと知らずのうちに救済幻想に憑かれた支援者は、当事者に一時の忘我脱魂の至福を保証することができても、たちまちのうちには当事者が墜落することを防ぐことができず、むしろ当事者の絶望を深めるとともに、過補償的な反動形成としての幻想的なB点への貪欲な希求を引き起こしてしまいます。

人生においては、自己と世界の出合いは不一致・一致の繰り返しを避けることができません。むしろこの現実を、C点の自由無礙の立場から実感・自覚することが、適切な自己及び世界の自己組織化をもたらすと、ホロニカル心理学では主張しているのです。

「不一致が否定されて一致によって肯定され、一致が否定されて不一致によって肯定される」という生成流転する出来事を人生では避けることができません。このことを、C点から実感・自覚することが適切な自己及び世界の自己組織化にとって最も重要であると指摘しているのです。