フロイトは、「喪とメランコリー」(1915)にて、自分を支えていた重要な対象(人、場所、理想など)の喪失に伴う悲哀のプロセスのことをモーニングワーク(喪の作業)と呼び、適切なモーニングワークのためには、大切な対象への思慕を断念し、喪失の事実を受け入れることが大切としました。
しかしながらモーニングワークが上手くいかず、喪失の事実を受け入れられず否認し続ける場合があります。特定の重要な対象との一体化が強かった人ほど、対象を失った傷つきがあまりに深く受け入れ難いものです。特に、突然の喪失体験の場合などには、あまりに急激な出来事に、あたかも自分が見捨てられたかのような絶望から、言葉にできない自己の傷つきによる憤怒がどうしても収まらず、場合によっては抑うつ状態に陥ることすらあります。
それでもほどよい距離を保てていた人は、対象の喪失に引き裂かれる思いに、一時的に抑うつ的になったり、否認したくなる気持ちに陥りつつも、次第に、避けることができなかった対象との別れの現実を受け入れることができるようになっていくものです。しかし、中には、憤怒が噴出しだす人など、人によって実にさまざまなモーニングワークがあるとした方が実態に近いように思われます。