ホロニカル的存在(1):ホワイトヘッドの概念との相似性

イギリスの数学者であり、哲学者のホワイトヘッド(1861-1947)の「活動的存在(actual entity)」の概念は、ホロニカル心理学の「ホロニカル的存在」(定森恭司.定森露子,2019)の概念と相似的です。

あるホロニカル的存在は、他のあらゆるホロニカル的存在との相互包摂的限定の中で、その振る舞いが決定され続けられていると考えられます。全宇宙のあらゆる物やあらゆる出来事は、すべてホロニカル的存在といえます。自己もホロニカル的存在です。他のあらゆるホロニカル的存在との相互包摂的限定の中で、自己としての振る舞いが決定され続けているのです。他のあらゆるホロニカル的存在との相互関係の中で自己組織化を促進していると考えられるのです。

ホロニカル的存在が生成消滅を繰り返しているところが、です。 そしてすべてのホロニカル的存在が、生成消滅を繰り返す原初の窮極の創造的なが、絶対無(空)といえます。すべては、主体も客体もない原初の絶対無(空)の場からなる事事無礙な出来事といえるのす。

ある自己によって、他のホロニカル的存在が実感される時、そこには実感する自己の主体と直観される非自己化された対象世界との区別が忽然と立ち顕れてきます。もし、直観のまま、すなわち主客未分化の原初のままの体験ならば、すべては生々しくアクチュアルです。しかし、主体と客体と二岐した途端に、リアリティはあっても、原初の生々しさは消えてしまいます。

あるホロニカル的存在は、他のあらゆるホロニカル的存在との相互包摂的限定の中でその振る舞いが決定するという意味では、仏教の説く、あらゆるホロニカル的存在は無自性といえます。あるホロニカル的存在は、それだけでもって何か固有な本質的なものをもつ存在とはいえないのです。他との関係の中で、「自ずと生起してくるもの」といえるのです。したがって、あらゆるホロニカル的存在は、唯一無二の出来事なのです。瞬間・瞬間、二度と同じことなどない、かけがえのなき出来事といえるのです。

参考:
中村昇(2007)「ホワイトヘッドの哲学」.講談社選書メチエ.
定森恭司・定森露子(2019)『ホロニカル・アプローチ 統合的アプローチによる心理・社会的支援』.遠見書房.