思考・認識の扱い方

ホロニカル・アプローチの「スポット法」の実施場面

思考や認識を扱うときには、時々刻々変化していく心的現実からはじめることが大切です。

自己と世界の出あいは、瞬間・瞬間、時々刻々と不一致・一致を繰り返しています。このとき、自己と世界の出あいの不一致・一致の非連続的な連続は、自己に刻々変化する気分を付随した直接体験をもたらしています。この絶え間なく変化する多様で複雑な直接体験に対して、ある一定のパターンを論理的に識別し抽出するとき、ある認識という行為が行われます。「私は今・怒っている」というように自分の複雑な感情に言葉を与える行為も認識といえます。

しかし、ここで気をつけなければいけないことは、ほとんどの場合、直接体験は、単純に怒っているという言葉で認識される以上の多様かつ複雑な気分を抱えているということです。空しい気持ち、悲しい気持ち、寂しい気持ちなど、もっと複雑なものを内包していることを見逃さないようにすることが大切です(※ホロニカル・アプローチの「スポット法」は、この観点から創発されています)。

心理学は、刻々変化していく直接体験から離れならないのです。認識や思考だけでは、心理学が限定されてしまうのです。

直接体験には、「識別が明確化しやすいものと、識別が曖昧なもの」「秩序だったものと無秩序」「意識化可能なものと意識化が難しいもの」「快と不快」「白と黒」「善と悪」など、相矛盾しながら対立するものが同時に含まれています。たとえ、何かの面がつ顕在化しても他方の複雑な要素が背景に沈み込んでいるものといえます。そのため、顕在化したものだけ扱う心理学は、ほんの一部分しか見ていないといえます。