直接体験(21):主観的世界と客観的世界の構成

自己と世界の不一致・一致直接体験そのものにおいては、まだ主観と客観の区分はありません。しかし不一致の瞬間に直接体験を統一する働きの方向に主観が生起し、統一される対象の方向に客観(対象化された自己及び世界)が生起します。自己と世界の出あいにズレが起きた刹那、観察主体の方向に主観的世界が形成され、観察対象の方向に客観的世界が形成されます。

自己と世界の出あいの不一致・一致の直接体験は、主観と客観の自発自展的な自己による実感・自覚を通して無限かつ創造的に深化させられていきます。直接体験を通じて自己及び世界を実感し知る自己(現実主体)が、創造的前進と遡源的環流を繰り返しながら自己及び世界を無限に深化させていきます。

しかも自己と世界の無限の創造的自発自展と遡源的環流による深化の背景には、何かの働きが考えられます。

ホロニカル心理学では、すべての破壊と創造の源である「Id(イド)」の働きと、すべてを総覧し統合する働きを持った「IT(それ)」の働きの不一致と一致が、自己と世界の不一致・一致による重々無尽の世界を生成消滅させていると考えています。絶対無(空)が、「Id(イド)」「IT(それ)」となって重々無尽の絶対有の世界を生成消滅させていると考えています。

自己にとっては直接体験は、多層多次元に識別されていく重々無尽の世界体験と、我が無となって自己と世界の一致する無境界体験が、相矛盾しながら同一にあると考えられるわけです。