雨降らしの人

スイスの精神科医・心理学者のカール・グスタフ・ユング(1875- 1961)が、宣教師リヒャルト・ヴィルヘルムから聞いたと言われる話に、「雨降らしの男」の物語があります(河合,1992)。数ヶ月も雨が降らぬ村に呼ばれた「雨降らしの男」は、小屋を作ってそこに籠もり雨を降らした理由を、道(タオ)に従い万物と自己が根源的に一になるのを自然にまっただけと説明したという話です。

「雨降らしの男」は、自然が自然自身を変容させる創発ポイントを実感・自覚できる人といえます。

ホロニカル心理学では、「雨降らしの男」は、「雨降らしの女」でも、「雨降らしの子ども」でもいいと考えています。ある場所の瞬間・瞬間の破壊と創造の矛盾の臨界ポイントに立ち会わせたとき、しっかりと自己自身に場所のもつ乱れを映し、自分なりにより生きやすい方向に生きる人のことを「雨降らしの人」と呼ぶことができると考えているからです。

参考文献:河合隼雄著,心理療法序説,pp14-15.

 

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