物と心

私たちは、普段、私たちの外に物があると思っています。また私たちは、心があると思っています。しかしながら、よくよく考えてみれば、私たちは、心の働きを離れて物そのものを知ることができません。また、心そのものを知ることができません。私たちは、物があると意識することができるところに必ず心の働きを実感しており、実在すると思っている世界は、実は物と心がいっときも離れてはありえないことに気づきます。

主観と客観の関係も同じです。主観を離れ客観を知ることはできません。主観と客観は、矛盾・対立し、一見背反しますが、同じ現象に対する双面的関係にあるといえます。

このように考えてくると、世界とは、主観や客観といわれるような心や物といわれる現象が起きてくる場そのものといえます。生成消滅が場をつくり、場が新たな生成消滅を引き起こしていると考えられるのです。

心を精神現象によるとし、物を物理現象によるとすると、場とは精神現象や物理現象を創り出しているものであり、精神現象とも言えず物理現象ともいえず、名づけることができず、見ることもできない、全ての生成消滅を司る働きといえます。

ホロニカル心理学では、こうしたのことを、“こころ”とし、心と区別しています。哲学では「絶対無」、東洋思想では「空」に相当します。