ABCモデル(10):何もする気力が無い人への対応

比較しても仕方ないと頭ではわかりつつも、どうしても自分と他人を比較し、羨望、苛々や焦燥感ばかりが募り、陰性の感情を込めて語り続ける被支援者がいます。こうしたクライエントに対して、つい支援者がなんとかしてあげたくなり、何かアドバイスしたり、何かを提案しても、「できない」と即答し、そうした反応しかできない自己を自覚すると、一層自己卑下的になっていきます。「例外探し」によって、<そんな気力のないところでもよくやれている>面を肯定的に支持しても、「前はもっとできていた」「そんなことはない」と自己否定的態度を続けます。すると、そのうち支援者も、何もできないという無力感、苛立ちや焦燥感を抱くようになります。

しかしこうしたとき、ABCモデルでいうA点固着状態の被支援者を、安全かつ安心してC点から俯瞰することができる場を設営するのが支援のポイントになります。<何もかもやる気がしないですよね。家事も散歩も出来てない自分がいるんですよね。ひたすらツイッターをやって、なんとか食事とトイレに行ったり・・・する以外、足の爪を切ることも、洗髪など、自分自身の身体のケアすら自分ではやる気力もない状態なんですよね>と、批判することもなく、ただ事実を事実として鏡映し、被支援者自身がA点固着状態にあることを、安全で安心出来る支援の場でC点から観察できるように支援することが大切になるのです。