小さな意味のある例外の増幅・拡充

被支援者の多くは、何かにつけて自己価値が低く、自己効能感や自己達成感を持てていません。自己存在そのものに対する罪悪感や羞恥心も強く自己批判的です。そのため被支援者の語りは、否定的な内容ばかりとなりがちです。しかし、ときに支援者から見ると、否定的な語りの中にも、ふと肯定的意味を感じる例外を感じるときがあります。ホロニカル・アプローチABCモデルでいえば、支援者から見れば被支援者にとってはB点と思う出来事です。

ところが、通常、被支援者は、例外にはほとんど意識していません。たとえ、一瞬、B点の体験を認めたとしても、「でも・・・」と自己違和感体験であるA点に舞い戻ってしまいます。

こうした被支援者の「でも・・・」に対して、支援者が<でも・・・>と、小さな意味の出来事の持つ大きな意味の違い例外的出来事としてのB点に焦点化し、そのときの体験の想起を促し、B点の体験の持つ肯定的意味の増幅・拡充を図ることが被支援者の適切な観察主体となるC点布置のための大切な作業となります。

A点ばかりに拘泥する状態にある被支援者にとって、人生には、B点もあることの実感・自覚を持てることは、その後の人生にとても大きな意味を持つ創発ポイントの可能性があるのです。

A点ばかりでなく、B点もある人生に目覚めていく被支援者は、A点ばかりに執着していた頃と比較すると、罪悪感や羞恥心を抱く自己に対して、これまでよりは自己受容的にはなり、その結果として、自己存在への自己肯定感が増え、自己自身に優しくなり、セルフケア能力が向上してきます。