自己と世界(17):実感と自覚

西田幾多郎の哲学の究極の原理ともいえる「瞬間が瞬間自身を限定する」、すなわち「絶対無の自己限定」(西田、1932))という絶対無(空)自身の自己否定という絶対的矛盾から、自己にとって多層多次元にわたる意識と物からなる重々無尽の世界が生成消滅することになると、ホロニカル心理学では考えています。

自己と世界の関係は、その究極において一でありながら、自己も世界も一なるものの自発自展として多の関係にあるのです。逆に重々無尽の多の世界の根底では、多が一として統一されているのです。すべてが一即多・多即一の関係のホロニカル関係(縁起的包摂関係)にあると考えられるのです。自己及び森羅万象の存在の根底において、超個的な統一力が働いているのです。超個的働きが個の個々の自己組織化を全体として一なるものとして統一していると考えれるのです。

こうした統一力によって、自己及び万物は、絶対無の創造的世界の多様な一表現として、それぞれに個性的な振る舞いが可能になっていると考えられるのです。

ホロニカル心理学でいう実感・自覚とは、自己が自己と世界の関係が、統一力と分化・多様化の自発自展しながらホロニカル関係にあることの深化的覚醒を意味しているのです。

参考:西田幾多郎,「無の自覚的限定」(1932).西田幾多郎全集 :西田幾多郎著 ;安倍能成 [ほか] 編, 第6卷,1965.岩波書店.