不確定性原理:“こころ”の現象でも当てはまるのでは

観察するという行為を離れて観察結果があるわけではありません。
観察結果は、観察する主体の影響を離れて客観的であるということは厳密にはできないといえます。

このことは位置と運動量という物理量のペアにおいて、片方を測定することによって不確定性が生じ、その結果としてもう片方の物理量の測定値にも不確定性が生じるというハイゼンベルクの不確定性原理でも知られたところです。

実は、不確定性原理と同じような観察原理が心理学でも働くのではないかと思われます。

多様な“こころ”の現象のから、何を観察しようとするかによって“こころ”の観察結果が変化を帯びてしまうのです。主観と客観の関係を離れて、“こころ”の現象を観察することができないのです。知の働きを発見しようとすれば知の働きを、情の働きを発見しようとすれば情の働きを、意の働きを発見しようとすれば意の働きを、神経生理的な働きを発見しとうとすれば神経生理的な働きを発見することができるのです。

しかし“こころ”そのものの働きを了解しようとすれば、まさに主観と客観との区分のない状態(“こころ”を観察しようとしない態度)を含み、無限に変化するする“こころ”の現象をあるがままに“自覚するしかないといえます。