
ホロニカル心理学は、内的世界と外的世界の概念を、観察する主体と対象の関係性を通じて捉え直します。内的世界は、自己の内部を観察対象とした時に構成される世界であり、外的世界は、自己の外部を観察対象とした時に構成されます。精神分析的には、内的対象関係が内的世界を、外的対象関係が外的世界を構成します。
しかし、ホロニカル心理学において重要なのは、内的世界も外的世界も、観察主体と観察対象の関係性によってその構成が影響を受けるという点です。一般的に、内的世界を主観的、外的世界を客観的と見なす傾向がありますが、ホロニカル心理学ではこのような区分けを超えます。
観察主体である自己が存在しなければ、内的世界も外的世界も存在しません。自己にとって、内的世界も外的世界も、観察主体の影響を受けずには存在しえないのです。外的世界が自己の向こうにある客観的な世界とされることが多いですが、ホロニカル心理学では、内的世界も外的世界も、観察主体から離れて論理的に推定され、知的に構成された世界観の一部と考えます。
観察主体が何を観察対象とし、どのような価値を持ち、どのような態度で観察するかによって、内的世界も外的世界も、そしてその関係性も変化します。例えば、不登校の子どもの場合、その原因分析は多岐にわたります。いじめ、過度な真面目さ、育て方、学歴偏重、担任の対応、起立性調節障害、社交不安障害など、観察者の問題意識によって多層多次元の見立てや解釈が可能です。
ホロニカル心理学は、このような現実を踏まえ、観察主体と観察対象の組み合わせによる見立てや解釈の差異を俯瞰します。どの見立てが正しいかの論争に巻き込まれることなく、観察主体と観察対象の組み合わせの差異そのものを重視し、最も適切な変容が可能になる対応方法を探求します。
このプロセスで重要なのは「俯瞰」です。観察主体と観察対象の組み合わせによる差異を無批判・無解釈・無否定に実感・自覚し、内的世界と外的世界の狭間で生じる複雑な現象を理解し、適切に対応することを目指します。この統合的視点は、ホロニカル心理学が提供する世界観であり、内的世界と外的世界の相互作用を深く理解するための鍵となります。