
架空事例:いろいろな事例を組み合わせて創作されています。
20代の女性Rさんは、自身の怒りっぽさについて、ホロニカル・アプローチの技法の一つである「サイコモデル図法」を用いて自己洞察を深め、変化を遂げていきました。Rさんの発言は「 」で、カウンセラー(Co)の発言は< >で示されます。
Rさんは心理相談をきっかけに、交際中の彼氏に対する自身の態度を振り返り、「以前は、彼が傷つくことを理解しながらも、彼を傷つけるようなことを言っていた」と語ります。これに対しCoは、Rさんの現在と過去の態度の「差異の明確化」を試みます。
Rさんは、「以前は、不満を感じると、過去の出来事を思い出し、彼に対する不満を抑えきれずに言ってしまっていた。しかし、今は、『今日はとても疲れていて調子が悪いから、側にいると毒気にあたるから、側にいないでね』と冗談交じりに言えるようになり、問題が自然に解決している」と語ります。また、「以前は、自分が正しいと信じ、相手が間違っていると思い込んでいた。そのため、相手を変えようとする気持ちがあった」とも語ります。そして、「自分の考えを押し付ける人が嫌いだったのに…」とつぶやきます。
Coが「自分の考えを押し付ける人」に焦点を当てると、Rさんは「自分の考えが正しいと主張する友人が苦手だった」と振り返ります。その後、苦手だった相手のイメージに刺激され、「(父方の)祖父がそういう人だった」と思い出します。「祖母が早くに亡くなったため、祖父は、(Rさんの)父親を一人で育てた人」だったようですが、「他人の欠点ばかりを指摘する人」「家族旅行でも、必ず何か言い出して雰囲気を悪くする人」と、次々と思い出します。
Coは、「サイコモデル図」を描きながら、<彼との些細な喧嘩がきっかけで、その不快な感情が、より深く抑圧されていた感情を引き出し、必要以上に彼に当たってしまっていたのかなあ>と、ABCモデルのC点の視点から、Rさんに自身に自己再帰に自己照合を求める感じで問いかけます。すると、「確かにそんな感じですね。何か私の“こころ”の中の地雷をいつも彼が踏む感じがあります」と納得顔をされます。
その後、Rさんは、「簡単に一気には変わらないですよね」と笑いながらも、イライラしたときには、その感情をすぐに表現することなく、完全に抑え込むこともなく、適度な耐性領域に収める力を身につけるようになってきたとのことで、心理面接は終了しました。
解説:「サイコモデル図法」は、内的世界や外的世界との関わり方のパターンを図式化したり、象徴的に描画したりすることで、“こころ”のパターンの意識化を促進するための心理教育的手段です。サイコモデル図は、他の人と共有する意味合いを持ちます。サイコモデル図を蓄積していくことは、臨床の智慧の財産化の意義を持ちます。