<コミュニケーションの差違>
週1回から隔週の家庭訪問支援におけるコミュニケーションは、診察室や面接室でのコミュニケーションとは、質的に異なります。診察室では、診断や症状の展開に治療者の関心は向きます。「どうですか、調子は?」となります。またカウンセラーは、流派や理論など専門性の違いによってカウンセラーが関心を寄せるポイントが異なるため差違を反映したコミュニケーションになります。カウンセラーやセラピストはそれぞれの専門性の違いに応じたコミュニケーションスタイルを展開します。
しかし、家庭訪問という日常生活に根ざした支援では、これら診察室や面接室でのコミュニケーションとはまた異なるスタイルが求められます。
<信頼関係の構築>
家庭訪問など伴走型の支援では、専門性よりも人間関係が重視され、支援者は家族の一員のような存在でありながらも、家族ではないという独特の立場を保つことになります。「親密な他者」と概念化できます。身内となるほどまでには近かずかず、といって他人のように遠すぎずの、ほどよい距離です。こうした関係は、診察室と面接室での関係は、非日常性や専門性が関係づくりの土台となるのとは、まったく質的に異なります。
<関係性の変化と対話>
家庭訪問における支援は、お見合いからデート、そして、親密な関係に発展していく関係性の変化に似ています。お互いに「親密な他者」となって、「また会いたくなる関係」が構築されると、お互いに心を開き、親密な対話が可能になります。
<対話による共創>
支援者と被支援者は、問題を共有し、喜怒哀楽を共有しながら協働関係を構築しながら解決策を共創的に探求していきます。支援がうまくいかないと感じたときは、お互いにその感覚を伝えあいながら問題解決を共創していきます。
<対話型アプローチ>
伴走型支援の核心である 親密な他者としての絆が深まると、お互いに何でも言い合える関係へと発展します。問題解決は、治療者や支援者が主導するのではなく、被支援者と支援者が共同で行われます。
<参考文献>
・千賀則史・定森恭司(2020).家庭訪問によって「また会いたくなる関係」を創り出すためのチェックリスト:適切な「場」を当事者と共に創り出す秘訣~.統合的アプローチ研究第 1 号.
・千賀則史・定森恭司 (2020). “ホロニカル・アプローチのABCモデルによる心理社会的支援”. 同朋福祉, 第28号.
・定森露子・千賀則史(2023).共創的な俯瞰を可能にする「外在化」.統合的アプローチ研究. 第4号.
・定森恭司(2022).当事者中心の支援の哲学.統合的アプローチ研究第3号.