
心理社会的支援に携わっていると、単なる偶然の一致とは思えず、当事者や支援者にとって深い意味をもつ出来事に出あうことがあります。このような現象は、スイスの精神科医・分析心理学者であるカール・グスタフ・ユングが「シンクロニシティ(意味ある偶然の一致)」として提唱した概念と重なるものとして理解することができます。
興味深いのは、地理的に離れ、人的交流や直接的な情報伝達が確認できない状況であっても、互いに相似的な出来事や発想が、ほぼ同時期に自発自展的に生起することが少なくない点です。もちろん、そのすべてをシンクロニシティとして説明できるわけではなく、共通する社会的背景や文化的文脈、あるいは複雑系における自己組織化や創発現象ど、他の現代科学の説明によって理解することもできるかも知れない現象です。
また、私自身の経験では、このような創発的な出来事は、組織や社会、文化の中心部よりも、むしろ周辺部において観察されることが少なくありません。社会的な注目を集める中心ではなく、光の当たりにくい場所で生きづらさを抱える人々の切実な苦悩や日々の実践を契機として、新たな価値や支援の方法が自然発生的に生み出される場面を幾度となく経験してきました。
このことは、既存の価値体系や制度の中心では捉えきれない課題が、周辺における具体的な実践を通して可視化され、新たな意味や価値が創発される可能性を示唆しています。ホロニカル心理学では、このような現象を、個人と世界、部分と全体とが相互に包摂し合いながら自己組織化を続けるプロセスの一つとして位置づけています。