
自己超越というと、ふだんの自分を超えて、まるで世界の外側に立ち、そこから全体を見渡すようなことを思い浮かべる方もいるかもしれません。けれども、ホロニカル心理学では、そのようには考えません。
なぜなら、私たちはつねに世界の外ではなく、世界の中に生きているからです。自分という存在も、他者との関係も、日々の出来事も、すべてこの世界の内側で生じています。ですから、本当の意味で自己超越とは、世界の外へ飛び出すことではなく、世界の中にいながら、自分と世界とのつながり全体を、より広く、より深く見つめられるようになることだといえます。
私たちは、目の前の出来事に巻き込まれているとき、その一場面だけに心を奪われてしまいがちです。けれども人間には、自分が今どのような関係の中にいて、何を感じ、何にとらわれ、世界とどう関わっているのかを、少し引いて見つめる力があります。ホロニカル心理学では、このようなはたらきを「俯瞰」として大切にしています。
ここでいう俯瞰は、冷たく距離をとることではありません。むしろ、自分を含むこの世界の中にしっかりと身を置いたまま、その全体のつながりをさまざまな視点から実感・自覚していくことです。自分だけを見るのでもなく、外の世界だけを見るのでもなく、自分と世界とのあいだに起きる現象の全体を、一つの場として感じ取り、見つめていくのです。
その意味で、自己超越とは、どこか別の高みに上ることではありません。そうではなく、今ここに生きている自分が、この世界の中で起きていることを、より多層的多次元的なより広い視野で実感し、自覚していくことなのです。ホロニカル心理学における自己超越とは、世界を離れることではなく、世界の内にありながら、その全体性にひらかれていく自己のあり方だといえるでしょう。