不一致・一致(3):一致の希求

自己は、自己と世界の不一致に対して、一致を求めて自己自身を自己組織化しようとしたり、外的世界を変容させようとします。しかし世界もまた、自己に世界との一致を迫ります。しかも両者の方向性は、必ずしも一致するとは限りません。

自己はこうした不一致に対して苦悩しますが、この時、ホロニカル心理学では、自己は自己と世界の一致への変容の手がかりを、自己と世界の不一致・一致の直接体験自身に求める姿勢を大切にします。そして自己は、自己自身を変容させたり、世界にも能動的に変容を求める存在といえます。自己は、何か自己以外の自己超越的な働きによって、ただ他律的に決定論的に生かされているだけの存在でもないと考えるからです。

直接体験に自己照合を求めるためには、自己は我(現実主体)による一切のはからいをとりあえず保留・停止し、自己が生きる場において、自己と世界が合一する(ホロニカル体験の一瞬の直観に手がかりを求める姿勢が必要になります。自己と世界の一致は、我(現実主体)の自助努力だけでは得られず、得られた気になっても、それだけでは独我論的域を超えることができません。といって、世界から迫りくるものに対して受動的であっては、世界から迫りくるものの中には、自己にとっては必ずしも受け入れ難いものも含まれます。

そこで自己が生きる場において個的自己の働きと世界の働きが受動性能動性をめぐってせめぎ合う直接体験の次元で、まさに両者が一致するところに創発される自然のはからいに生きる生き方が大切になるのです。